THE BLUE HEARTS 日本最重要アルバム

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 今日はおそらく多くの日本人の人生を大きく動かしてきた、そして今も動かし続けている、おそらく日本で最も重要なロックンロールのアルバム、ザ・ブルーハーツの1st「THE BLUE HEARTS」のお話をしようと思います。


 まだ聴いたことのない人は、人生を大きく変える(いい意味でも悪い意味でも狂わされる)かもしれないので、注意してください! ( ´艸`)




THE BLUE HEARTS






僕とブルーハーツの出会い

 さて、僕は正直ブルーハーツ世代ではないし、ヒロト・マーシーの歴史で言うと、どちらかと言うと、ザ・クロマニヨンズの時代に若者だった世代なんですが……、ブルーハーツの存在はもともと知ってました。(のちにクロマニヨンズ大好きになりますけどね)
 ……親が好きでね。家に「全日本EAST WEST SIDE TOUR」(だっけ?)のVHSビデオがあって、小さいころに飛び跳ねながらめちゃくちゃ楽しんで観てたのを覚えてます。(今でもあのライブビデオは大好きですよ!)
 
 しかし、僕は小中学生のときは音楽をほとんど聴かなくて……(持ってたCDがゆずと川嶋あいくらい 笑)。全然興味なかったんですけど、高校のとき友達にブルーハーツの「スーパーベスト」を借りたんですよ。ミスチルが好きな友達だったんで、ミスチルも一緒に借りたんですけどね……、」
 
 そのとき、やっすいデジタルオーディオプレーヤーに落として聴いたブルーハーツの歌詞が、なんか脳髄に直撃した感じでね。音楽に感動するってこういうことかなと思いましたよ。



「SUPER BEST」(今回は1stの紹介ですが、一応)

1. リンダ リンダ
2. 人にやさしく
3. シャララ
4. ロクデナシ
5. ラブレター
6. 平成のブルース
7. キスしてほしい(トゥー・トゥー・トゥー)
8. ハンマー
9. チェインギャング
10. TRAIN-TRAIN
11. ラインを越えて
12. 僕はここに立っているよ
13. 英雄にあこがれて
14. 青空
15. 終わらない歌
16. ブルーハーツより愛をこめて
17. 1985




 多分日本全国にそんな人がどの時代にもいるんでしょうけど、スーパーベストに入っていた「ロクデナシ」っていう真島昌利(マーシー)さん作曲の曲が、「ああ、これは俺の歌だ」と子供心に思って、もうやられてしまったんですよね。

「役立たずと罵られて 最低と人に言われて 要領良く演技出来ず 愛想笑いも作れない」ってのは、もう学校生活の中の僕そのもののように感じられたし(いや、直接最低とか言われてたわけじゃないし、適当にうまくやってたんですけどね。心の中ではそんな感じでした)「劣等生で充分だ」というがなるような声には、心の底から「そうだ!!」と思いましたよ!







すぐにアルバムを買いに行った

 正確に言うとそれはブルーハーツとのセカンドコンタクトだったんですけど(子供のころに家にビデオがあったので)、10代の感覚で聴くブルーハーツは、それはそれは特別な衝撃がありました。

 とにかく、他のブルーハーツの曲が聴きたくて……。
 家にあったビデオをあらためて観てみたりしたんですけど、とうとうアルバムを探しに出まして……。1stアルバムと書いてある「THE BLUE HEARTS」を即購入(当時、持ち金をほとんどヒロトとマーシーに捧げていましたね 笑)




ザ・ブルーハーツ「THE BLUE HEARTS」

1 未来は僕等の手の中
2 終わらない歌
3 NO NO NO
4 パンク・ロック
5 街
6 少年の詩 
7 爆弾が落っこちる時
8 世界のまん中
9 裸の王様
10 ダンス・ナンバー
11 君のため
12 リンダ リンダ




 基本的にスゴいバンドのアルバムって、最初から3枚目のアルバムまでは名盤になるように思うんですが(クラッシュなら「白い暴動」「動乱~獣を野に放て~」「ロンドン・コーリング」、ビートルズなら「プリーズ・プリーズ・ミー」「ウィズ・ザ・ビートルズ」「ハード・デイズ・ナイト」とかいろいろある)、なかでも1stってのは、勢いがあり、そのバンドの存在そのものみたいなものに仕上がってくると思うんです。
 ブルーハーツの1stってのが、まさにそれで……。もうブルーハーツというバンドそのものって感じのアルバムなんですよね。










その魅力とは?

 ブルーハーツの特徴って、一番は“正直“っていうところだと思うんです。

 何も隠さない、嘘のない言葉って、2000~2010年代の歌謡曲やJ‐POPにはほとんどなかったと思うんですよね(すみません。ろくに聴いてないのにそんなこと言っちゃダメだけど、僕は出会えなかったってことです
 ヒットソングには必ず感動の物語があり、美しいメロディや優しい歌声がある。でもそれは、僕にとっては全然優しい言葉でも救いの歌声でもなくて………。

 だって、普通の中流家庭に生まれた僕に、そんな壮大な物語や、悲しい過去や、激しい恋なんてね、……あるわけないじゃないですか?
 世の中の歌って、当時は、なんか自分とは違う世界のもので、選ばれた、恵まれた「主人公」みたいな人だけのものって感じがして、いけ好かなかったんですよ。
 僕はね、普通に学校行って、普通にクラスのちょっとかわいい子が気になってて、クラスにムカつく奴もいて、ワイドショーで偉そうなことをしゃべってるテレビの中の大人や、それに文句を言うテレビの前の大人に苛立ってる、箸にも棒にも掛からない、ただの子供だったんです。……たぶん、だからブルーハーツは僕の心に響いたんだと思います。ブルーハーツを聴くのに背伸びはいらないんです。嘘はいらないんです。そのままの自分で聴けるんですよ。


「パンクロック」ライブ映像



 ブルーハーツはかっこいい。でも、そのかっこよさは、世の中のみんながかっこいいって言っているものとは違う。そして、明らかにブルーハーツの方がかっこいい。

 だから、ブルーハーツは説得力があるんですよ。僕には到底届かない「かっこよさそうなもの」よりも、ほら、俺らの方がかっこいいでしょ? と平凡な僕そのものを歌ったような歌を歌っている。………これが、僕の人生を狂わせた(いい意味でも悪い意味でもだよ)!!

 ブルーハーツの演奏は現代の音楽グループの演奏に比べると、超粗削りだし、単純だし、歌われている言葉も非常に易しいし、内容もシンプルです。


「僕 パンクロックが好きだ ホントに 心から好きなんだ」
パンクロック/作詞・作曲 甲本ヒロト
「いろんなことが 思い通りに なったら いいのにな」
少年の詩/作詞・作曲 甲本ヒロト



「少年の詩」ライブ映像

 歌詞の中でこんなことを言う日本語の歌が他にありますかね……?










いつでも正直に、本当の自分に戻れるアルバム

 ときどき、「チェルノブイリ」という歌がシングルのカップリングにあったり、このアルバムの「NO NO NO」という曲でも「戦闘機が買えるくらいのはした金ならいらない」とか「原子爆弾ぶち込まれてもこれにはかなわない」とか言っているから、ブルーハーツの歌を反戦の歌とか反原発ソングみたいに解釈する人がいるけど、僕はそれは全然違うと思うんですよね。むしろ逆だろと……。
 そういった偉そうな理屈や、社会的なことよりも、俺たちは目の前のあの子が、あるいはロックンロールが大事なんだ、ってことをこそブルーハーツは歌っていると思うんです。ブルーハーツは社会問題なんてどうでもいいと思ってると思います(どうでもいいは言い過ぎか)。自分たちがロックすることが大事だってね。だってロックンロールって彼らにとっては社会的なメッセージを送るための道具じゃなく、〈目的〉なんだから……。偉そうに世の中で問題になっていることに興味を持っているふりをして、意見がある顔をする人をブルーハーツはむしろ笑っていると思います。
 おっさんが偉そうにするためにワイドショー見て、自分の意見みたいに評論家の意見を居酒屋で披露してるのを、ブルーハーツは笑う。俺たちにはもっと大事なものがあるんだとね。
 そこが僕はたまらなく好きです。
 そうなんです。僕は好きな人と好きなものだけあれば、本当はいいんです。
 それだけあれば他は……。

 大人になると他のものが色々増えてくるけど、学生時代に聴いたブルーハーツはそれでも人間の本当のところを、正直に、裸のまま、歌い続けている。












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