北海道のヒーロー THA BLUE HERB

今回は音楽の話です。

 今回紹介するのは北海道出身のヒップホップグループTHA BLUE HERBのデビューアルバム「STILLING,STILL DREAMING」です。
 名前がロックバンドのザ・ブルーハーツとよく似ているんですが、ブルーハーです。もちろんブルーハーツを文字ってつけた名前らしいんですが……。
 僕はブルーハーツもブルーハーブも両方好きなんですけどね(笑)





「STILLING,STILL DREAMING」THA BLUE HERB

【DISC1】
1.THIS ’98
2.ONCE UPON A LAIF IN SAPPORO
3.¥
4.SHOCK-SHINEの乱
5.BOSSIZM
6.STOICIZM PRELUDE
7.STOICIZM
8.孤憤
9.COAST 2 COAST 2
10.続・腐食
11.ペンと知恵の輪
12.ペンと知恵の輪(WE LOVE IT MADLY)
13.あの夜だけが
14.AME NI MO MAKEZ

【DISC2】
1.SHOCK-SHINEの乱(1 PREMISE)
2.RAGING BULL
3.知恵の輪(THIRD HALLUCINATION CHAOS)
4.北風(WIND FOR WIN)







ヒップホップ界のシャクシャインとして
~カッコよすぎる登場と超ヒップホップ的なスタンス~

 僕ら世代だとラップというのは、ヒットソングにもかなり登場する、もはやポピュラーな歌唱法で、ブルーハーブが出てきた頃の状況とは大きく異なるイメージのものでした。(僕は正直ヒップホップシーンにはそれほど詳しくないんですが、自分なりに書いていきますね)
 しかし、ブルーハーブが北海道から殴り込みをかけてきたのはもっと前、ライムスターやキングギドラといったグループたちが、日本の音楽に日本語のラップ・ヒップホップを本格的に根付かせようとしていた日本ヒップホップの黎明期。
 ライムスターやキングギドラは、ものすごくカッコいい形で「日本語」でラップをし、完成度の高い曲とサンプリングやダンスといったカルチャーとともに、日本にヒップホップを根付かせた立役者です。彼らは「どうやって日本語でラップをするのか?」「どうやって日本人にヒップホップの良さを分からせるのか?」「日本の文化・生活の中でヒップホップを普及するには?」ということに非常に意識的で、ヒップホップ界のメインストリームとして、それに続くフォロアーたちもたくさん作りました。




ライムスター、キングギドラ、ソウルスクリームのライブ映像



 そこに「俺らこそが本当のヒップホップだ」と現れたのがブルーハーブなんですよね。
 この時点で、ストーリーとして、ものすごくグッとくるんですよ。僕も片田舎の出身ですしね。ブルーハーブは今となっては超レジェンド級のヒップホップグループなんですが、最初は東京でヒップホップをしめている人たちに対して、「俺らこそ正しい」「俺らの方がヒップホップだ」って急に北海道から出てきて、正面からケンカを売ってみせたんですよ。
 で、サラ金で借金して作ったというアルバム「STILLING,STILL DREAMING」がもうめちゃくちゃカッコいい!! 強烈な完成度と地方からの「ホンモノ」の殴り込み! 
 圧巻の説得力があったんですよね。



THA BLUE HERB

 北海道札幌市出身のヒップホップ・グループ。メンバーはラッパーのILL-BOSSTINO、トラックメイカーのO.N.O、ライヴDJのDJ DYEの3名。99年に『STILLING, STILL DREAMING』でアルバム・デビュー。以来、多種多様な要素を取り入れたサウンドと熱く力強い“言葉”で熱狂的な支持を生む。2000年に初の全国ツアーを開催し、フジロックにも出演。2005年より一時ライヴ活動を休止するも、2007年に再始動し『LIFE STORY』を発表。2012年の4作目『TOTAL』を経て、2017年にEP『愛別EP』をリリース。


2012/08/30 (2017/09/12更新) (CDジャーナル)





 もともとヒップホップって、持たざる者に優しい音楽ですよね。
 いろんな音楽のビートをもってきて、喋るように言葉を入れるっていうのは、特別な才能よりも、情熱と蓄えた知識、考えた時間がものを言うっていうか……。好きなやつがキングになれる、みたいなイデオロギーをライムスターなんかにはめちゃくちゃ感じるし、だから聴くととても勇気が出る!
 そのヒップホップシーンに、いや、「東京じゃなくてもやれんだよ!」「いや、北海道の方がホンモノだから!」みたいな、場所的な壁さえ破壊するブルーハーブが現れたわけですよ。

「北から日が昇ることに慣れてないお前たちは俺たちの存在そのものに、まだとまどっているんだろう」

と「ONCE UPON A LAIF IN SAPPORO」という曲でBOSSさんが言ってますけど、ブルーハーブは、東京の人には分からないと思いますけど、地方の閉塞感をブッ飛ばしてくれるんですよね。







一番のお気に入り「孤憤」


 僕が地元にいるとき、感じていたのは、「俺は本当に社会と(文化と)繋がっているのだろうか?」というような、取り残され感でしてね。10代のころはパンクロックに夢中だったんですけど、周囲にそんな音楽聞いている人がいなくて、「ホントにこの土地は今聴いている音楽と地続きなんだろうか?」といつも思っていて、そういう悔しさというか、寂しさみたいなものが心のどっかにずっとあったんです。

 ブルーハーブはいつも「そうじゃねぇんだと」言ってくれるんですよね。「取り残されちゃいねえ」と。「俺はここにいる」「だから見ろよ」っていう力強い叫びを、あげてくれるんですよ。
 北海道という東京とは遠く離れた場所で、ヒップホップのメインストリームと繋がってないようにも思えるところで、俺らはずっとやり続けてんだ。それこそがホントのヒップホップじゃないの? という叫び、自信、それを裏打ちする楽曲!
 それだけで勇気なんです。 
 
 ヒップホップってジャンルそのものが持たざる者のジャンルだけど、ブルーハーブはもっともっと、限りなく裾野を広げています。どこにいてもできる!っていうね。
 そして加えて、それはヒップホップに限らず、どこでもどんな奴でも、「好き」と「情熱」さえあればやれるんだ、と叫んでいるようにも、僕は感じるのです。

 「言いたいことはただ一つ、止まるな、やるしかねぇんだ」(「孤憤」)

 ヒップホップを全然知らない人にもぜひ聴いてほしい1枚です。


 ILL-BOSSTINOさんの言葉
http://www.tbhr.co.jp/monthlyreport/





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